岩手県(いわてけん)釜石市(かまいしし)に、「東(あずま)鮮魚店(せんぎょてん)」という魚(さかな)の店(みせ)があります。その店(みせ)には、昔(むかし)の「殿様(とのさま)」の顔(かお)に見(み)える魚(さかな)がいます。ヒラメという種類(しゅるい)です。殿様(とのさま)は、１５０年(ねん)以上(いじょう)前(まえ)、さむらいがいた時代(じだい)の一番(いちばん)偉(えら)い人(ひと)のことです。魚(さかな)の形(かたち)が殿様(とのさま)の顔(かお)に見(み)えるので、買(か)い物(もの)に来(き)た人(ひと)たちに人気(にんき)があります。

　魚(さかな)の大(おお)きさは４０ｃｍぐらいです。昔(むかし)の殿様(とのさま)は、髪(かみ)を頭(あたま)の上(うえ)で結(むす)ぶ「ちょんまげ」という髪(かみ)の形(かたち)をしていました。しっぽが「ちょんまげ」のようです。体(からだ)の真(ま)ん中(なか)ぐらいにある黒(くろ)い点(てん)は、目(め)のように見(み)えます。体(からだ)の周(まわ)りにあるものは、髪(かみ)の毛(け)やひげのようです。口(くち)や鼻(はな)のように見(み)える所(ところ)もあります。

　店(みせ)の人(ひと)がこのヒラメを売(う)るために、店(みせ)の前(まえ)に置(お)いていました。すると、いつも来(く)るお客(きゃく)さんがヒラメを見(み)て、「人(ひと)の顔(かお)に見(み)える」と言(い)いました。それから、その話(はなし)を聞(き)いて、たくさんの人(ひと)が見(み)に来(く)るようになりました。それで、店(みせ)の人(ひと)は売(う)るのをやめました。箱(はこ)の中(なか)で泳(およ)いでいるところを、見(み)てもらうことにしました。

　「見(み)に来(き)た人(ひと)は、『刺(さ)し身(み)』などを買(か)っていきます」と、この店(みせ)の八幡(やわた)雪夫(ゆきお)さん（７０歳(さい)）は言(い)います。ヒラメのおかげでお客(きゃく)さんが増(ふ)えたので、八幡(やわた)さんは喜(よろこ)んでいます。「このヒラメは、死(し)ぬまでお店(みせ)にいます。一度(いちど)見(み)に来(き)てください」と話(はな)しています。